2006年06月02日

B)シンデレラコンクール

B)シンデレラコンクール
期間:2006年3月10日
対象:小学校5年生男女 ティーチャーズトレーニング対象教員
1)概要
UNRWAにおいて音楽隊員は各地方、2代目及び3代目を迎えている。諸先輩隊員の音楽教育に対する熱意とその継続性により、UNRWAにおいて現在音楽教育は情操教育の一手段として認識されるまでに至り、また各現場からその継続的教育効果をさらに期待されるまでになっている。これからさらに教育機関、管理者、教員の意識の向上と、学童、児童に対しての教育効果を上げていく為に、UNRWA初の「全国音楽コンクール」を設けることを提案し、以下に述べることとする。

目的、及びコンクール形式の効果と期待
1)UNRWA学校教育へ向けてのアプローチ
UNRWAの今現在の現状として、まだ現地教員の数は極めて少なく、UNRWAの全地区の全学校で音楽の授業が行われている訳では無い。コンクールを行う事により児童の技術・意識向上を望むのはもとより、シリアあるいはUNRWA全教育関係者に対しての「教育成果のアプローチ」としても位置づけたい。児童は学外で大きな発表の場を設ける事で、さらなる関心や興味を抱くと予想でき得る。今まで緒先輩隊員が行ってきた地道な草の根活動を、より広くより深く根付かせ認識させる為に、以後普遍的手段として効果的であると思われる「コンクール形式」を選択し行う事を望む。そしてJICAからの新しい教育的アプローチとして、UNRWA教育関係者ひいてはシリア全教育関係者、シリア国民に提示したい。
2)教員および教育管理者に対しての呼びかけ
コンクールという形式は発表会とは異なり順位が付く事が一般的である。各都市(ダマスカス、ホムス、ハマ、ラタキア等)での代表チームで競う訳であるが、あくまでも情操教育の一環であるので、音楽表現ありきであるという認識を持たせるよう意識したい。各学校での教育段階で音楽隊員及び現地音楽教員だけで進めていくのではなく、学校全体での関心・バックアップを求めたい。プロジェクト企画その2・ティーチャーズトレーニングとの相互企画として、コンクールのプログラムの1部に教員の合同発表の場を設ける。教員のモチベーション向上と、技術向上が狙いであり、積極的に参加させる事によりコンクールや発表の場の教育的効果の理解を深めさせたい。今後出来るだけ多くの教育関係者にアプローチ(注1)をし続ける事が大きな関心を持たせ、UNRWA学校教育のレベルアップに繋げる為の第一歩に成り得ると考える。
(注1)現教育者に有効な教育手段の1方法として認識させたい。今後継続して行い、児童と教員との相互的教育効果をねらう。
3)児童に対しての効果
出場資格(後述)として5年生の男女である事を第一としたい。音楽的、身体的、語学的能力の差を出来るだけ無くし、出来るだけ公平な条件である為である。そして継続的効果として1〜4年生までが5年生でのコンクール出場を目標にし、これから永続的に目標に向かい学習・活動を続ける事が出来る。常にレベルの底上げを図るための有効的手段だと考え得る。外の世界を意識する事により、児童のコンテストを通して音楽に関する興味・関心は一層深いものになるであろう。より良い音楽を観客に聴かせるという発表会には無い、新しく鋭い感覚を身に付けさせたい。
4)音楽教育を全国区にする為の1手段
シリア全土においての音楽教育の認識は、まだまだ低いと思われる。人間を育てる情操教育で、大変効果のある教育手段である事を広く認識させたい。これを期に多くの方々に関心を持ってもらう事を望み、音楽人口のみならず、音楽教育者人口の拡大につながる事を期待し、企画運営を進めていきたい。
効果と期待(要約)
音楽教育の重要性と理解を促す
児童の心の育成(向上心と積極性)
全国的に関心による自発的な教育的拡散
自主的な音楽教育の導入と、教員の育成
UNRWA教育機関の自立と発展を願って
いずれはUNRWAがアラブ諸国において模範的立場になる為の一投石














2)運営結果概要
1.名称・・・
日本語名:第1回シンデレラコンクール〜子供たちの未来に魔法をかけよう〜
英語名:CINDERELLA CONTEST
アラビア語名:مسابقة سندريلا المسيقية

2.開催期日・・・2006年3月10日

3.会場・・ケンディーサーラ(ホムス)

4.主催・・JICA

5.後援その他・・・UNRWA、その他未定

6.コンクールの構成・・・
9時・・・PA,撮影隊会場入り(ケンディーサーラ(ホムス)
12時・・・児童、及びJOCV会場入り
      15時00分・・・開場

14時・・・本番開始
第1部・・・シリア、パレスチナ、日本の国歌を全員で斉唱(5分(一番のみ))
第2部・・・ティーチャーズトレーニング参加教員発表 (10分)
第3部・・・各校発表 6校(10分×6=60分)

休憩 (15分)

第4部・・・全員合唱  a)ウエーンアラームアッラー b)さくら  (10分)
第5部・・・審査発表 (20分)
      終了
18時・・・終了


7.運営委員・・・
リーダー:16-3 川田則之(ホムス)・・・総括・連絡担当
17-1 楮谷紀子(ダラア)・・・経理・機材申請担当
16-2 西本佳代子(ハマ)・・・広報(TT、ポスター等も含む)担当
17-1 赤星光江(アレッポ)・・・渉外担当(印刷物・パンフレット作成等)
17-1 小木曽尚子(ラタキア)・・・会場設営(席決め等)担当
17-2 吉見智子(アレッポ)・・・演奏(課題曲)・審査担当
舞台配置 進行 その他 詳細は随時決定

8.審査委員・・・
UNRWAバドラン教育長、JICA長沢所長、JOCV代表米津隊員

9.出場資格・・・
5年生の男女混合チーム・20〜25人
男女率を出来るだけ50:50にするようにした。

10.出場方法・・・
12月(仮)に行われる学内選抜試験で選ばれた児童が学校代表となる。
学校代表の選抜方法は各教員に任せた。

11.曲目・・・
各学校にとき入れ替えを含めて10分とした。
課題曲(1曲)・・・マウタニー(1番のみ)
* 旋律のみの歌唱。ピアノ伴奏が付く。
* 指揮者はJOCV或いは現地教員が行うようにした。
* ピアノ伴奏は吉見智子(音楽隊員)が演奏し、公平性を保つ為、6つの学校全てにおいて行った。
自由曲(1曲)・・・自由
アンサンブル形態(合唱・器楽)は各地区に任せた。
入れ替えがあるので、大編成の器楽形態は控えた。

12.賞・・・
各審査項目ごとの賞を設けた。6校出場の場合、各校それぞれに賞がいきわたるようにした。
*初回は競争するイメージを持たせず、自身と周囲の実力を認識する程度に留めておきたい。2回目以降状況を見合わせつつ、賞の設定方法を考察する。

13.審査発表
当日演目終了後、審査時間を設け発表した。
審査委員長により各賞の発表をした。

14.審査
a)審査内容
1)音楽表現能力
2)技術能力
3)パフォーマンス
4)態度
5)アイデア
6)協調性
以上6項目のうち特に秀でた能力を審査した。
上記の項目は、これからのUNRWA音楽教育に必要と思われる事柄である。
    6校すべてに賞がいきわたる様配慮した。
音楽表現能力・・・good music expression賞   ダマスカス学校
技術能力・・・good technique賞           アレッポ学校
パフォーマンス・・・good performance賞      ハマ学校
態度・・・good manner賞                ダラア学校
アイデア・・・good idea賞                ホムス学校
協調性・・・good teamwork賞             ラタキア学校

b)審査方法
審査員3人でのディスカッション形式とした。
各賞がどの賞に相応しいかを検討し決定した。

15.経費(運営費、出場者の旅費等)
第1回目に関してはJICAが大会運営費、旅費全て負担する。運営方法、運営手段、運営効果全てに関してJICA側が提示をする為。
第2回目以降はUNWRAとの協議により決定した。

16.その他
A) 本コンテストで行われる演奏についての、作品、録音、放送、等に関する諸権利は、主催者に帰属した。
B) 引率は音楽隊員と、現地教員で行う事を基本とした
C) 食事はJICAからは提供しない。校長づてで、親から子供に持たせた。
D) バスに関してはJICAが提供した。各都市に2台ずつにする。約50人乗れるので、
生徒1人に付き親1人の割りで可能である。観客としてくる人数をあらかじめ把握しておく事を注意した。
 
3)実施結果
 コンクール終了後、全国的に音楽教育に対する注目度が高まり、各地で反響が高かった。ホムス地区ではこのコンクールに出場することを目標に、意識向上を促してきた。10月の授業開始後、5年生男女それぞれの学校で12月に選抜テストを行う事を伝え、授業に対する姿勢をよりよりものにし得るように指導した。第7項「教員活動・教育普及人材育成プロジェクトの成果と結論」に於いて、コンクール実施効果を検証する。

参考資料
コンクール実施後に記載した原稿を、実施結果としてなり得るため掲載することにする。


JICAシリア事務所発行「アハバールカシオン」原稿より
 2006年3月10日当日。およそ9ヶ月の準備を経て、「第1回シンデレラコンクール〜子供たちの未来に魔法をかけよう〜」が、いよいよ開かれようとしている。ここではシリア国内の6つのUNRWA学校(ダマスカス・ホムス・ハマ・アレッポ・ラタキア・ダラア)によるコンクール、及び昨年の9月から継続し行われている「ティーチャーズトレーニング地方編」の受講者による発表、などが行われる。全てが少しずつの積み重ね。ホムスでの通常授業、クラブ活動、プロジェクト会議、そしてティーチャーズトレーニングでの地方巡業。これらの事を計画を元に、音楽教育の為にと今まで続けてきた。このコンクールは私個人の活動の目安にもなり、今後の為の貴重な財産となる。当日の今日。何が起きるか解らないが、「予測」を大事にしながら行動していこうと思った。
 私はコンクールリーダーとしてスタッフとして名乗り出てくれた多くのJOCVの皆様と共に、会場で準備にあたっていた。しばらくしたらホムスの学校にいるスーパーバイザーのイブラヒム氏から電話があった。「子供たちを会場に向かわせたい。」と。6つ全ての地域の子供たちは、トイレ休憩、練習、着替えの為にホムスの学校に集まっているのだ。そして連絡があったのは10時30分。予定の12時よりも早く会場に着きそうだ。私が1番危惧していたのは「時間」。日ごろでもそうだが、アラブ人は時間を守らない。そして準備と確認をしない。その結果何度も同じミスを繰り返す訳だが・・・。でも今日はどうやら違うのか。彼の言葉尻から緊張感が漂っていた。
 11時過ぎだっただろうか。予定よりも早く生徒が会場入りをし始めた。会場にコンクール前の微妙な緊張感が漂う。そしてそれぞれの地域ごとに指定された席に着く。各学校の衣装が学校教員の想いも加わってか、なんとも可愛らしい。ホムスも会場入りした。ベレー帽と先生方が作ったリボン、ステッチに一工夫あるYシャツ、そしてここシリアではよそ行きらしいジーンズを履いている。生徒の表情は明るい。さすが笑いの街(?)の人間「ホムスィー」なだけに怖いもの知らずなのだろうか。各学校のリハーサルを見て思ったことがある。隊員も生徒もいい表情をしているという事だ。私たち音楽隊員が頑張れるのも子供が大好きだからであり、そんなふとしたやり取りを見ているとなんとも微笑ましく思える。そして見守る会場内のスタッフも豊かな表情をしていたのが印象的だった。思いのほか緊張しているのがTT参加の先生方だ。朝ホムスの学校で先生方の対応に当たっていた音楽隊員から「TT参加の先生が出たくない」との連絡があった。どうやら本番を前にして怖気づいたのか、人に心配をかけてる上になんとも情けない事を言ったものだ。でもそのはず、2月にTTが終了して以来やや時間が空いているのだ。それが原因なら答えは簡単。練習すればいいのだ。そしてリハーサル。気がつけば軽快なピアノ伴奏と共に、堂々と歌っていた。
 3時半会場予定だったが遠方から来る客も早めに着くとの事で、会場を3時に変更した。ぞくぞくと会場に客が入ってくる。各学校それぞれ座席で練習し始める。徐々に会場内に緊張が高まるのを感じていた。子供たちはどういう心境なのだろうか。緊張で手足が震えているのではないか。ちなみにホムスイーの子供たちは会場前、人の髪の毛を触って「どこのシャンプー使ってるの?」なんていう余裕のある質問をしてきていた。そんな明るく自然に楽しめるこの空間が、自分は大好きでたまらない。子供と接していてもっとこの時が続けばいいのに、日本に帰りたくないな、と思うときがよくある。
 いよいよ本番だ。元々2階席は使わない予定だったが、1階席満員のため急遽使うことになった。客席からはこれからへの期待する空気がとても伝わってくる。時間も予定より15分ほど早く始める事が出来た。司会は中学生女生徒2名。アラビア語・英語を分担し先生の指導の元、練習を積んできたようだ。全体合唱は3曲の国歌。インターナショナルな意味合いと、3国の「協調」によるコンクールである為である。そう、この「シンデレラコンクール」は「競争」ではなく「協調」なのだ。1位はいらない。なぜなら全員に音楽を楽しんでほしいから。この貴重な瞬間を子供の頃の明るい思い出として取っておいて欲しいから。
 ダラア、ラタキアの順に生徒の発表は進んでいく。各学校とも素晴らしい演奏と音楽を表現していた。とてもドキドキしてきた。いよいよホムスの番になり腹をくくらなければならなくなった。通路に並ばせ舞台へと進んで行き、1歩1歩、生徒は私の後を付いて行く。生徒はいつもの子供たち。ああ、緊張する。思えば10月から選抜の為の準備を学校でしてきた。メンバーを決めたときも他の生徒はみんな応援するって言っていた。少しずつかもしれないが、みんなの気持ちがここにあるのだ。最初の歌はマウタニー。パレスチナ人なら誰でも知っているメジャーな曲だ。指揮者として構える。生徒にはいつもこう言っている。「やさしく歌いましょう!」。なぜなら喉を無駄に力を入れない習慣をつけておくとのちのち音をコントロールしやすくなるからだ。怒鳴りがちになってしまう子供の声。音楽を音楽的に行う為の第1歩の努力だ。音程もしっかり取れているしいい感じだ。子供の表情にも少しゆとりが出たのだろうか。そして自由曲3曲。今回はオリジナル曲で挑戦することにした。それはまずこの子供たちに適したソルフェージュ曲が少なく作る必要があったのと、聴いている関係者にソルフェージュの必要性を訴える為でもあった。そして「ハーモニー」の重要性。まだまだ先だがUNRWA音楽教育の水準を世界レベルにする為には、そのハーモニーの概念は大変重要である。今まで音楽が軽視されていた為、当然2声や3声の音楽教材など存在しない。アラビア音楽を演奏するのは簡単だし客受けもいいだろう。だがそれではいつまで経ってこの国の音楽教育が発展しないのだ。その自由曲の歌詞はTT参加の先生が書き、曲は自分が子供たちに力量に合わせて作った。生徒たちの表情を舞台から見ていてこう思った。以外と自然体で歌えてるな、と。授業教材としても使っている為、週3回これらの曲を歌っていることになる。音程も問題ないし、目指していたところには到達していた。たくさんの客の拍手を聞いたときどう思ったのだろうか。嬉しかったに違いない。ホムスだけでなく全ての学校の子供たちの表情は、来客の方々が作ったと言っても過言ではない。演奏者と視聴者との人間的なやり取りがそこにある訳だ。心と心のキャッチボール。音楽は人間の魂を育てるのだ。
 コンクールのハイライトとも言える表彰の場面。各校に盾と賞状が授与させる。そのときの子供たちの歓喜の表情といったら大変なものだった。みんなで作り上げるということ。それがどれだけ尊くて素晴らしいものか。ここまで素晴らしいステージになったのはいろいろな人達の協力や想いがあってこそ、というのも片隅において欲しいと思った。
コンクールが終わり先ほどの興奮をやや残したまま、子供たち、父兄や先生方、たくさんの来客者は出口へと向かっていく。帰り際子供たちが手を振る姿を見て、「あ、終わったんだ。」と感じた。子供たちは最後まで笑顔だった。みんな笑顔だった。 
第1回シンデレラコンクール。子供達の豊かで喜びに満ちた表情は、このコンクールを象徴すると言ってもいいだろう。シンデレラの夢。魔法使いの夢。かれらの素敵な夢が現実となった記念すべき日。すこし淋しい気がするが、また来年も新しい子供達と、新しい笑顔、新しい夢に出会えることが楽しみに、日々の活動を積み重ねていきたいと思った。

*尚、コンクール終了後2時間に及ぶコンクールの模様を収録した映像素材を、編集し教育的資料として作成した。添付資料CDを参照のこと。
posted by かわちゃん at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) |   B)シンデレラコンクール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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